更新日時:2025.2.13
5) 5S・7Sがないと一般衛生管理ができない
これも2)の続きです。手引書では5S・7Sを推奨しています。現場の環境整備において、非常に有用だからです。おおむね、以下のような意味です。整理→整頓→清掃によって、清掃(目的)が実現できる。その定着には習慣づけが重要、という流れです。あくまで「目的」があるので、手段が目的化しては本末転倒です。
・整理=要るものと要らないものを区別する(要らないものは処分する)
・整頓=要るものを、決まった場所に決まった量だけ置くルールを確立する(置き方を表示しておくと、整頓はしやすくなります)
・清掃=キレイに掃除する
・清潔=上記3つを実行した上で、キレイで使いやすい状態を保つ
・しつけ、習慣づけ=上記4つを維持できるよう、ルールや規律として習慣づける
7Sは、2004年に日本規格協会から「食品衛生新5S」という本で提唱された考え方です。食品安全ネットワークという組織が考案した、比較的新しいものです。5Sとの大きな違いは「洗浄」「殺菌」を追加したことですが、ここで重要なのは「目的」の明確化です。7Sも5Sも目的は「清潔」ですが、5Sが工業的な衛生が目的(=目視できる清潔)、食品現場では微生物学的な清潔(=目視できない清潔)が必要です。
食品安全ネットワークは、5Sを食品現場の衛生管理に適用する中で、「目的が異なるから、食品現場に適した形にアレンジする必要がある」と考える中で、この概念を考案しました(と聞いています)。
現場の衛生環境を整備するための手段として、「整理→整頓→清掃」に「洗浄→殺菌」を足した手順を明文化しました。「整理しなければ、整頓の効率は上がらない」→「整頓しなければ、清掃が十全に機能しない」→「清掃しなければ、洗浄が十分に効果を発揮できない」→「洗浄しなければ(残渣などが残っていると)殺菌が十分に効果を発揮できないは」と考えます。そして、これらの手順の定着には、しつけ/習慣づけが大切です。
ここで失念してはいけないのが、5Sと同様、7Sも目的達成のための「手段」「道具」として使いこなすことが重要、ということです。
そして、上記の概念がわかっていれば、5Sでも7Sでも、現場でやる作業は同じです。「5Sと7S、どちらをやればいい?」という質問はナンセンスです。目的と手段を認識できていれば、7つ以上に増やしても構わないくらいです。
個人的には、著者は「メンテナンスが優れている現場は、衛生管理もきめ細やかなところが多い」という印象を持っているので、7Sに「整備」(予防的保全)を追加して、8Sにしてはどうか、などと考えたりしています。5Sも7Sも継続的改善が必須です。保全を入れることで、継続的改善に意識を向けることが習慣化するのではないでしょうか?