更新日時:2025.5.14
本サイトでは、HACCP制度化に対応した、多くの現場で利用可能な「衛生管理計画」のサンプル文書として、「HACCP実施要領」を作成しました。
実施要領は、一般的な工場・加工場を想定した「惣菜編」と、飲食店などの調理現場を想定した「調理編」の2種類をご用意しました。
工場向けの文書として「惣菜業」を選んだのは、最も原材料や工程が多様だからです。惣菜編の内容を参考にして頂ければ、他の食品への応用がしやすいと考えました。
また、「製造(工場)」と「調理(厨房)」の2種類に分けたのは、HACCPへのアプローチの仕方が異なるからです。調理場は、原材料や工程が複雑・多様で、また食事を提供したその場でお客様が喫食します。工場と比べると、官能評価などで安全管理が可能な場合もあります。加えて、調理場は日々の業務があわただしく、記録付けをよりシンプルに構築する必要があります。
そうした業種の違いを考慮して、この2種類を開発しました。
【開発の経緯】
2018年の食品衛生法改正で、原則として全ての食品事業者がHACCPの実施が求められるようになりました。HACCP制度化では、食品事業者には、下記の4項目が求められています。
①「一般的な衛生管理」及び「HACCPに沿った衛生管理」に関する基準に基づき衛生管理計画を作成し、従業員に周知徹底を図る
②必要に応じて、清掃・洗浄・消毒や食品の取扱い等について具体的な方法を定めた手順書を作成する
③衛生管理の実施状況を記録し、保存する
④衛生管理計画及び手順書の効果を定期的に(及び工程に変更が生じた際等に)検証し(振り返り)、必要に応じて内容を見直す
HACCP制度化では、業界団体等が開発した手引書を参考にするという選択肢が提示されています。
一方で、「どのような衛生管理計画を作ればよいかわからない」「手引書の通りにやろうとしたが、手引書の記述が自分たちの現場に合っていない」といった声も聞かれています。
そこで本書では、下表に示す「公衆衛生上必要な措置に関する基準」(食品衛生法 施行規則 別表第17及び別表第18)に沿った衛生管理ができるようなサンプルを提示しています。
HACCPに取り組む事業者の中には、将来的な事業拡大や輸出などを視野に入れている方もいらっしゃると思います。
そこで本書では、一般衛生管理で取り組む項目については、ISO/TS22002-1に沿って構築できるようになっています。将来的なFSSC 22000などのステップアップがスムーズになるよう配慮しています。
【食品衛生法と食品衛生監視票との整合性に配慮】
本書は、ISO 22000やISO/TS22002-1に沿っていますが、国内の様々な法律との整合性にも十分に配慮しています。
食品衛生法との整合性については、特に慎重に配慮しているので、ぜひ本書に沿って衛生管理計画を構築した後に、保健所が監視指導で使用している「食品衛生監視票」を用いて、現場の自己採点を実施してみてください。
必ずや、自社のHACCPおよび一般衛生管理の取り組みに自信を持って、説明責任を果たせるようになっているはずです。
【HACCP制度化対応で大事なのは「ハザード分析」です】
皆さんは、こんな誤解をしていませんか?
-50人以上の施設では「HACCPに基づく衛生管理(Codex HACCP)」を実施しなければならない。
-「HACCPに基づく衛生管理(Codex HACCP)」は難しいから、小規模施設では実施困難だ。
-50人未満の施設では「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を実施しなければならない。
-「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」のやり方=手引書に従う
これらはすべて不正確です。手引書は、すべての事業者が汎用的に利用できるとも限りませんし、万能なツールでもありません。手引書の通りに従ったからと言って、HACCP実施を保証できるわけでもありません。
食品安全に関するハザードやリスクは、従業員数によって変わるはずはありません。使用する原材料や製造工程、施設・設備の状況や一般衛生管理の状況、従業員教育などによって変わるものです。
大事なのは「個々の現場でハザード分析を行い、それに基づく衛生管理計画を作成し、見直しながら改善すること」です。
まずは一度、ぜひ本書を手に取ってみてください。