更新日時:2025.2.13
3) 一般衛生管理ができないとHACCPができない
これは、HACCP制度化前は、説明する人によってニュアンスが違っていたと思います。一般衛生管理がしっかりしていないと、ハザード分析が複雑になる、ひいてはHACCP計画が複雑になる、ということですが、中には「一般衛生管理を完成させないと、HACCPに進めない」というくらい、強い圧力で一般衛生管理の重要性を説いていた人もいたように感じます。
この誤解が広まった原因の一つは「下が一般衛生管理、頂点がHACCPの三角形の図」と言えば、何の図かイメージできる人は多いでしょう。私は、あの図の影響力だと思います。ピラミッドなので、底辺が完成しないと、頂点が積み上げられない、と勘違いした人が、一定数いたのだと思います。私は、その図の考案者(と名乗っている先生)と面識はありますが、その先生はハザード分析の重要性を誰よりも強く説いておられたので、「一般衛生管理とHACCPの関係性を伝えるため」に、あの図を編み出したのだと思います。
その後、一般衛生管理とHACCPを「車の両輪」のように、並列で表現する図も出始めました。個人的には、「一般衛生管理とHACCPの関係性」を正しく理解できていれば、どちらの図でも構わないと思っています。
ただし、もともと一般衛生管理もHACCPも「どちらもやらなければいけないこと」です。場合によっては、先にハザード分析をやって、その結果を踏まえてHACCPを動かし始めた方がよいかもしれません。多くの会社は、これまで事故を起こしていないと思います。だったら、「なぜ事故が起きていなかったか?」に理由づけ、根拠づけをすれば、自ずとHACCP計画はできあがるでしょう。そして、ハザード分析の過程で考えたこと、議論したことを踏まえて、一般衛生管理の見直しの優先順位を付ければよいのではないでしょうか?
そして何より、2021年からはHACCP制度化が施行されています。もはや「一般衛生管とHACCPは、どっちを先にやるべき?」という議論は無用です。別表17に沿って一般衛生管理、別表18に沿ってHACCPを構築しなければなりません。
では、一般衛生管理は、どこまでやらなければいけないのでしょうか? 言い方を変えると、私は「営業許可を取っていれば、HACCPに取り組む準備はできている」くらいに割り切っていいと思っています。