「○○しないとHACCPはできない」という誤解⑥~加熱と金探を必ずCCPとは決めつけない

更新日時:2025.2.13

6) 加熱と金探をCCPにしないとHACCPできない

・加熱工程は必ずCCPか?

 付け加えると、米国を中心に「品質管理をきちんとしていれば食品安全ハザードが制御できる場合、CCPは不要」という考え方もあります。

 例えば、ホットケーキは、しっかり焼いてフワフワにしなければ商品になりません。ホットケーキを焼く温度や時間は、殺菌目的ではなく、品質管理の目的で設定されています。しかしながら、ホットケーキを焼く温度・時間であれば、一般的な食中毒菌は確実に殺菌できます。もし温度が低ければ、ベチャベチャのホットケーキになってしまし、商品として消費者の口に入る心配はありません。

 消費者に有害な微生物のリスクが及ぶ可能性は極めて低いので、こうした工程をCCPで管理する必要はない(はず)です。もちろんCCPに設定しても問題ないですが、あまり(CCPに)する意味はないでしょう。

 同様のことは「ご飯を炊く」「炊飯をいためる」「冷凍する」「うどんを茹でる」「うどんを冷水でしめる」といった、様々な料理に当てはまるかもしれません。炊きあがっていないご飯が流通することはありません。

 茹でたり煮たりする工程も、沸騰水で茹でるなら100℃でしょう。冷凍されていれば0℃以下でしょう。これらは、わざわざ温度を測る意味はないかもしれません。

(注意:この理屈が当てはまるかどうかは、ハザード分析で評価してください)

 

・金探は必ずCCPか?

 では、金属探知機はCCPとして必須でしょうか? 

 一般論として、金属異物の混入予防は一般衛生管理によるべき、と言うことはできます。

 どの食品メーカーも、金探に頼ることはしていないでしょう。金属片が発生する箇所の予防的保全(包丁やスライサー、篩の欠けがないことの確認など)をシッカリと行っています。

 一方で、特に日本では「金属探知機を設置しているのならば、そこはCCPにすべき」という考え方もあり、そこは今後もなかなか変わらないようにも思います。

 とはいえ、ISOやFSSCの審査機関の関係者に伺ったところ、「金探=必ずCCP、とは考えていない」という意見も聞いたことがあります。

 本来であれば「金探をCCPにするかどうかは、ハザード分析の結果で決まる」というのが本質的な議論です。

 

 さて、それとは別の次元の議論ですが、実は金属検出をCCPに設定するのは、理屈の上で難しい点がいくつかあります。

 皆さんもHACCP研修などで教わったと思いますが、是正措置の組み立て方は①逸脱品の隔離、②現状復帰、③原因究明、④再発防止策を立てる、の4項目です。実は、金探をCCPにした時、CCPの管理計画の立て方は結構、複雑です。

 

 金属探知機をCCPに設定した場合、管理基準(許容限界、CL)は、おおむね2通りの考え方になります。

①全製品に金属が含まれないこと

②金属探知機が正常に稼働する状態にあること(テストピースを流して、正常に作動すること)

 

 ①をCLにすると、理屈の上では、逸脱品が発生した時に、混入原因を特定するまで、作業が再開できなくなります。あるいは、誤作動が多い機械を使っている場合、改善措置の負担が非常に大きくなり、製造業務に支障をきたす可能性もあります。

 その課題を解消したのが②の考え方です。しかし、この考え方は、異物混入が発生した際に、金属の発生箇所の究明など、いわゆる「真の再発防止策」を含む考え方にはなっていません。

 とはいえ、上記は、あくまでも「理屈の上でのHACCP計画の作成が難しい」というだけの話です。

 ですので、①でも②でも、どちらでも構わないと思いますが、以前は①が主流だったところが、最近は②が主流のように感じています。