更新日時:2025.2.13
高まる微生物の自主検査の必要性
食の安全を保証する上で、微生物検査の結果は絶対に必要なデータです。
原材料や中間製品、最終製品の検査から、環境の清浄度確認のための検査(製造環境、作業者の手指、使用水等々)、さらにはHACCPが正しく運用されているかの検証(verification)、HACCP計画の妥当性確認(validation)に至るまで、様々な場面で微生物検査のニーズがついて回ります。
HACCPが普及し始めた頃、「HACCPをやると最終製品の検査が不要になるので、微生物検査は減る」みたいな声も聞かれましたが、実際には(HACCPに関する検査だけでなく)一般衛生管理の重要性が強調されたことによって、必要な検査は増えたともいわれています。
しかし、それは「自社の食品の品質や安全性を説明する」という目的では、どうしても必要なことです。
様々な簡易検査法、迅速検査法が利用可能
なので、微生物検査では、効率化・迅速化が求められています。また、最近は検査・分析の分野でも、人手不足は顕著になっています。検査業務の省力化・省人化も、多くの検査室で共通の課題になっています。
そこで注目されているのが、簡易検査、迅速検査、といわれる検査法です。特に、キット化された、簡単に使える検査法は、特別な技術が不要な場合が多く、かつ操作時の安全性や、結果の信頼性にも配慮が行き届いている場合が多く、非常に有効です。
食品衛生法に対する適合性確認(コンプライアンス適合性の確認)は公定法でやるしかない
自社で製造している製品が、食品衛生法で規格・基準が定められている場合、その規格を遵守していることを確認するための検査(コンプライアンス適合性を確認するための検査)は、いわゆる公定法に沿って実施しなければなりません。その検査結果は、裁判など公的な場でも使用される可能性があるため、検査手順も厳格に定められているのです。
なので、もし、それを自分たちで出来ない、自分たちでやっても信頼性に疑問符が付く、というのであれば、外部の検査機関に依頼するのがよいでしょう。
自主検査の方法は、目的にさえ合っていれば、基本的には自由に選べる
一方で、それ以外の検査――例えば「原材料や中間製品の自社基準に合致しているかを確認する検査」「工程管理(HACCP)の運用状況を検証する検査」「環境の清浄度管理のための検査」などは、公的な規格・基準があるわけではなく、自社あるいは取引先から要求される規格・基準を守っていればよいので、いわゆる「自主検査」として行うことになります。そうした検査では、基本的に検査法は自由に選択することが可能です(取引先から検査法が指定されている場合は、その方法でなければならないでしょうが)。
公定法、標準法、参照法、代替法
「公定法」「標準法」「参照法」「代替法」といった言葉を聞いたことがあるかもしれません。ここでは、HACCP運用に必要な情報として、ザックリと言葉の意味を説明しておきます。
公定法は、各国で規定されています。「最も感度が高いから、最も信頼できるから公定法になっている」というわけでもありません。各国の事情を考慮しながら規定されています。日本では、食品衛生法に基づく「食品、添加物等の規格基準」で定められた検査法、乳等省令に基づく乳および乳製品の検査法が該当します。
標準法や参照法は、誤解を恐れずにザックリと言えば「国際的に認められ、広く受け入れられている方法」です。それらは、様々な組織・機関が妥当性確認を行った試験法なので、その信頼性が世界中で受け入れられています。
国際的には、ISO法やFDA(米国食品医薬品局)のBAM法、AOAC法などが、標準法の主流となっています。国によっては、標準法が、公定法として採用されている場合もあります。
日本では国立医薬品食品衛生研究所を中心に組織された「食品からの微生物標準試験法検討委員会」という組織が、ISO法と整合性のとれた(ISO法を標準として妥当性確認を行った)試験法を「NIHSJ(標準試験)法」として、「日本の標準法」としています。
日本の場合、「食品衛生検査指針 微生物編」に収載された検査法も、標準法として扱うことが多いようです。
※NIHSJ=National Institute of Health Sciences Japan
※BAM=Bacteriological Analytical Manual
代替法(alternative method)は、上記の公定法や標準法、参照法の代わりとなる検査法です。
代わりとなるわけですから、操作が簡単、手順が省略できる、時短ができるなど、何らかのメリットが得られる場合が多いです。中には、公定法よりも感度が高い場合もあります。