手引書の位置付けは、あくまでも「参考資料」

更新日時:2025.2.12

 もし「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」「フレキシビリティのあるHACCP」のことを、「手引書の通りにやること」と捉えているのであれば、それは大間違いです。

 
 今の日本のHACCP制度化の最大の誤解の1つは、以下です。2つ書いてありますが、この2つは同じ意味です。
①50人未満の現場は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」に取り組まなければならない
②「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」では、手引書の通りの管理をしなければならない

 この図は厚生労働省の説明用資料です。食品取り扱い者が50人未満の事業者は、右側の「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」に取り組むことになります。「簡略されたアプローチ」とあります。

 この「簡略されたアプローチ」は、様々な選択肢があります。しかし、このアプローチが「手引書」だけに限定されているような印象があります。

 

 「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」とは「手引書に従って衛生管理をすること」ではありません。事業者にとって、手引書の位置付けは「参考資料」の一つに過ぎません。必ずしも手引書通りのHACCP運用にこだわる必要はないのです。

 手引書の位置付けはむしろ、行政関係者にとっての「監視指導を平準化するためのツール」としての側面です。つまり、行政が指導に入る際、「手引書に書かれている以上のことを求めない」という、「指導時の線引き」ではないでしょうか?

 
 「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を説明するには、「フレキシビリティのある(柔軟な、弾力的な)HACCPの運用」の考え方の説明が不可欠です。フレキシビリティに関する理解を関係者で議論し、醸成・共有する必要があります。

 しかしながら、「フレキシビリティ=手引書のままやること」となっています。これではフレキシビリティどころか、HACCP運用から柔軟性・弾力性を奪っています。HACCPは、各事業者が自由に(自己責任で)取り組むものです。

 できれば「フレキシビリティ」という言葉を使わずに、中小・零細規模の事業者や、飲食店などの現場が「どのような取り組みができるか?」をイメージしやすい言葉で説明できれば、とは思っています。