更新日時:2025.2.13
2021年6月からHACCP制度化が本格施行され、1年半以上が過ぎました。一方で、2023年に弁当製造業で芽胞菌による広域・大規模な食中毒が発生したり、チェーン展開している飲食店での肉の加熱不足が原因と考えられるO157食中毒、食品の保存性に関する知識が欠如していたとしか思えないような焼き菓子(マフィン)による食品の変敗問題などが報道されました。
さらに言えば、大規模食中毒には、原因物質(微生物の種類)は特定されたが、汚染源や汚染経路など、「真の原因」まで究明されていない事件も散見されます。
「真の原因」が究明され、関係者間で共有されなければ、食品事業者はその事例を「教訓」「他山の石」として参考にすることはできない。食中毒事件の報告書として、HACCPと一般衛生管理の重要性が総花的・包括的に記載されていても、なかなか参考にはできません。
そもそも世間一般では「HACCP導入のメリット」の一つに「問題が起きた時の原因究明が速くなる」と言われているのに、これでは「日本では全事業者がHACCPを導入している」という状況に矛盾していないでしょうか?
2023年に青森県で発生した芽胞菌による食中毒では、現時点では明確な原因に関する報道はなされていないようです。こうした状況を鑑みると、HACCP制度化の有効性には現時点では疑問符を付けざるを得ません。
どこかのタイミングで、「HACCP制度化は有効に機能しているか?」という観点で、客観的な評価をする必要があるのではないでしょうか?
その時、HACCPの「導入率」や「認知率」で評価してはなりません。すでに制度化されているのですから、導入率も認知率も100%でなければならないのです。
コロナ禍以降、食中毒統計は件数・患者数とも減少傾向を見せています。その背景には、手洗いやうがいなど、巷間で衛生慣習の励行が定着した影響もあると思われます。しかし、最も大きな要因は、基本的には飲食店の利用機会が減り、ノロウイルスとカンピロバクターによる食中毒が減少したことが影響しているのではないでしょうか?
真の意味でHACCP制度化が、日本の食品安全の向上に寄与していると言うためには、まだまだ「HACCPとHACCP制度化に対する正しい理解や取り組み」の普及が必要です。